このガイドでは、Active Recordを利用してデータベースからデータを取り出すためのさまざまな方法について解説します。
このガイドの内容:
enum
生のSQLを使ってデータベースのレコードを検索することに慣れた人がRailsに出会うと、Railsでは同じ操作をずっと洗練された方法で実現できることに気付くでしょう。Active Recordを使うことで、SQLを直に実行する必要はほぼなくなります。
Active Recordは、ユーザーに代わってデータベースにクエリを発行します。発行されるクエリは多くのデータベースシステム(MySQL、MariaDB、PostgreSQL、SQLiteなど)と互換性があります。Active Recordを使えば、利用しているデータベースシステムの種類にかかわらず同じ記法を使えます。
本ガイドのコード例では以下のモデルを使います。
特に記さない限り、モデル中のid
は主キーを表します。
class Author < ApplicationRecord has_many :books, -> { order(year_published: :desc) } end
class Book < ApplicationRecord belongs_to :supplier belongs_to :author has_many :reviews has_and_belongs_to_many :orders, join_table: "books_orders" scope :in_print, -> { where(out_of_print: false) } scope :out_of_print, -> { where(out_of_print: true) } scope :old, -> { where(year_published: ...50.years.ago.year) } scope :out_of_print_and_expensive, -> { out_of_print.where("price > 500") } scope :costs_more_than, ->(amount) { where("price > ?", amount) } end
class Customer < ApplicationRecord has_many :orders has_many :reviews end
class Order < ApplicationRecord belongs_to :customer has_and_belongs_to_many :books, join_table: "books_orders" enum :status, [:shipped, :being_packed, :complete, :cancelled] scope :created_before, ->(time) { where(created_at: ...time) } end
class Review < ApplicationRecord belongs_to :customer belongs_to :book enum :state, [:not_reviewed, :published, :hidden] end
class Supplier < ApplicationRecord has_many :books has_many :authors, through: :books end
Active Recordでは、データベースからオブジェクトを取り出すための検索メソッドを多数用意しています。これらの検索メソッドを利用することで、生のSQLを書かずにデータベースへの特定のクエリを実行するための引数を渡せるようになります。
以下のメソッドが用意されています。
annotate
find
create_with
distinct
eager_load
extending
extract_associated
from
group
having
includes
joins
left_outer_joins
limit
lock
none
offset
optimizer_hints
order
preload
readonly
references
reorder
reselect
regroup
reverse_order
select
where
検索メソッドにはwhere
やgroup
といったコレクションを返すものもあれば、ActiveRecord::Relation
インスタンスを返すものもあります。また、find
やfirst
など1件のエンティティを検索するメソッドの場合、そのモデルの単一のインスタンスを返します。
Model.find(options)
という操作を要約すると以下のようになります。
after_find
を実行し、続いてafter_initialize
コールバックを実行します。Active Recordには、単一のオブジェクトを取り出すためのさまざま方法が用意されています。
find
find
メソッドを使うと、与えられたどのオプションにもマッチする「主キー」に対応するオブジェクトを取り出せます。以下に例を示します。
# 主キー(id)が10のクライアントを検索 irb> customer = Customer.find(10) => #<Customer id: 10, first_name: "Ryan">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.id = 10) LIMIT 1
find
メソッドでマッチするレコードが見つからない場合、ActiveRecord::RecordNotFound
例外が発生します。
このメソッドを使って、複数のオブジェクトへのクエリを作成することもできます。これを行うには、find
メソッドの呼び出し時に主キーの配列を渡します。これにより、指定の「主キー」にマッチするレコードをすべて含む配列が返されます。以下に例を示します。
# 主キー(id)が1と10のクライアントを検索 irb> customers = Customer.find([1, 10]) # OR Customer.find(1, 10) => [#<Customer id: 1, first_name: "Lifo">, #<Customer id: 10, first_name: "Ryan">]
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.id IN (1,10))
find
メソッドに渡された主キーの中に、どのレコードにもマッチしない主キーが1個でもあると、ActiveRecord::RecordNotFound
例外が発生します。
テーブルで複合主キーを利用している場合、単一の項目を検索するときに配列を渡す必要があります。たとえば、customersテーブルの主キーが[:store_id, :id]
と定義されている場合は、以下のように指定します。
# customerを「store_id 3」と「id 17」で検索する irb> customers = Customer.find([3, 17]) => #<Customer store_id: 3, id: 17, first_name: "Magda">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers WHERE store_id = 3 AND id = 17
複合IDで複数の顧客を検索する場合は、以下のように配列の配列を渡します。
# 複数の顧客を主キー「[1, 8]」と「[7, 15]」で検索する irb> customers = Customer.find([[1, 8], [7, 15]]) # OR Customer.find([1, 8], [7, 15]) => [#<Customer store_id: 1, id: 8, first_name: "Pat">, #<Customer store_id: 7, id: 15, first_name: "Chris">]
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers WHERE (store_id = 1 AND id = 8 OR store_id = 7 AND id = 15)
take
take
メソッドはレコードを1件取り出します。どのレコードが取り出されるかは指定されません。以下に例を示します。
irb> customer = Customer.take => #<Customer id: 1, first_name: "Lifo">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers LIMIT 1
Model.take
は、モデルにレコードが1つもない場合にnil
を返します。このとき例外は発生しません。
以下のように、take
メソッドで返すレコードの最大数を数値の引数で指定することもできます。
irb> customers = Customer.take(2) => [#<Customer id: 1, first_name: "Lifo">, #<Customer id: 220, first_name: "Sara">]
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers LIMIT 2
take!
メソッドの動作は、マッチするレコードが見つからない場合にActiveRecord::RecordNotFound
例外が発生する点を除いて、take
メソッドとまったく同じです。
このメソッドで取り出されるレコードは、利用するデータベースエンジンによって異なることがあります。
first
first
メソッドは、デフォルトでは主キー順の最初のレコードを取り出します。以下に例を示します。
irb> customer = Customer.first => #<Customer id: 1, first_name: "Lifo">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.id ASC LIMIT 1
first
メソッドは、モデルにレコードが1件もない場合はnil
を返します。このとき例外は発生しません。
デフォルトスコープが順序に関するメソッドを含んでいる場合、first
メソッドはその順序に沿って最初のレコードを返します。
以下のように、first
メソッドで返すレコードの最大数を数値の引数で指定することもできます。
irb> customers = Customer.first(3) => [#<Customer id: 1, first_name: "Lifo">, #<Customer id: 2, first_name: "Fifo">, #<Customer id: 3, first_name: "Filo">]
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.id ASC LIMIT 3
複合主キーを持つモデルの順序付けは、複合主キー全体を利用する形で行われます。
たとえば、Customerモデルの主キーが[:store_id, :id]
で定義されている場合は以下のようになります。
irb> customer = Customer.first => #<Customer id: 2, store_id: 1, first_name: "Lifo">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.store_id ASC, customers.id ASC LIMIT 1
order
を使って順序を変更したコレクションの場合、first
メソッドはorder
で指定された属性に従って最初のレコードを返します。
irb> customer = Customer.order(:first_name).first => #<Customer id: 2, first_name: "Fifo">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.first_name ASC LIMIT 1
first!
メソッドの動作は、マッチするレコードが見つからない場合にActiveRecord::RecordNotFound
例外が発生する点を除いて、first
メソッドとまったく同じです。
last
last
メソッドは、(デフォルトでは)主キーの順序に従って最後のレコードを返します。以下に例を示します。
irb> customer = Customer.last => #<Customer id: 221, first_name: "Russel">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.id DESC LIMIT 1
last
メソッドは、モデルにレコードが1件もない場合はnil
を返します。このとき例外は発生しません。
複合主キーを持つモデルの順序付けは、複合主キー全体を利用する形で行われます。
たとえば、Customerモデルの主キーが[:store_id, :id]
で定義されている場合は以下のようになります。
irb> customer = Customer.last => #<Customer id: 221, store_id: 1, first_name: "Lifo">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.store_id DESC, customers.id DESC LIMIT 1
デフォルトスコープが順序に関するメソッドを含んでいる場合、last
メソッドはその順序に従って最後のレコードを返します。
last
メソッドで返すレコードの最大数を数値の引数で指定することもできます。例:
irb> customers = Customer.last(3) => [#<Customer id: 219, first_name: "James">, #<Customer id: 220, first_name: "Sara">, #<Customer id: 221, first_name: "Russel">]
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.id DESC LIMIT 3
order
を使って順序を変更したコレクションの場合、last
メソッドはorder
で指定された属性に従って最後のレコードを返します。
irb> customer = Customer.order(:first_name).last => #<Customer id: 220, first_name: "Sara">
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers ORDER BY customers.first_name DESC LIMIT 1
last!
メソッドの動作は、マッチするレコードが見つからない場合にActiveRecord::RecordNotFound
例外が発生する点を除いて、last
メソッドとまったく同じです。
find_by
find_by
メソッドは、与えられた条件にマッチするレコードのうち最初のレコードだけを返します。以下に例を示します。
irb> Customer.find_by first_name: 'Lifo' => #<Customer id: 1, first_name: "Lifo"> irb> Customer.find_by first_name: 'Jon' => nil
上の文は以下のように書くこともできます。
Customer.where(first_name: "Lifo").take
上と同等のSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.first_name = 'Lifo') LIMIT 1
上のSQLにORDER BY
がない点にご注意ください。find_by
の条件が複数のレコードにマッチする場合は、レコードの順序を一貫させるために並び順を指定すべきです。
find_by!
メソッドの動作は、マッチするレコードが見つからない場合にActiveRecord::RecordNotFound
例外が発生する点を除いて、find_by
メソッドとまったく同じです。以下に例を示します。
irb> Customer.find_by! first_name: 'does not exist' => ActiveRecord::RecordNotFound
上の文は以下のように書くこともできます。
Customer.where(first_name: "does not exist").take!
id
で指定するfind_by
やwhere
などのメソッドで条件を指定するときにid
を使うと、モデルの:id
属性と一致します(これは、渡すIDが主キーでなければならないfind
と異なります)。
:id
が主キーでないモデルでfind_by(id:)
を使う場合は注意が必要です。たとえば、[:store_id, :id]
が主キーとして定義されているCustomerモデルの場合を考えてみましょう。
irb> customer = Customer.last => #<Customer id: 10, store_id: 5, first_name: "Joe"> irb> Customer.find_by(id: customer.id) # Customer.find_by(id: [5, 10]) => #<Customer id: 5, store_id: 3, first_name: "Bob">
ここでは、複合主キー[5, 10]
を持つ1件のレコードを検索するつもりだった可能性がありますが、Active Recordは:id
カラムが5または10のいずれか一方であるレコードを検索するため、誤ったレコードを返す可能性があります。
id_value
メソッドは、find_by
やwhere
などのfinderメソッドでレコードの:id
カラムの値を取得する目的に利用できます。以下に例を示します。
irb> customer = Customer.last => #<Customer id: 10, store_id: 5, first_name: "Joe"> irb> Customer.find_by(id: customer.id_value) # Customer.find_by(id: 10) => #<Customer id: 10, store_id: 5, first_name: "Joe">
多数のレコードに対して反復処理を行いたいことがあります。たとえば、多くのユーザーにニュースレターを送信したい、データをエクスポートしたいなどです。
このような処理をそのまま実装すると以下のようになるでしょう。
# このコードはテーブルが大きい場合にメモリを大量に消費する可能性あり Customer.all.each do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
しかし上のような処理は、テーブルのサイズが大きくなるにつれて非現実的になります。Customer.all.each
は、Active Recordに対して テーブル全体を一度に取り出し、しかも1行ごとにオブジェクトを生成し、その巨大なモデルオブジェクトの配列をメモリに配置するからです。もし莫大な数のレコードに対してこのようなコードをまともに実行すると、コレクション全体のサイズがメモリ容量を上回ってしまうことでしょう。
Railsでは、メモリを圧迫しないサイズにバッチを分割して処理するための方法を2とおり提供しています。1つ目はfind_each
メソッドを使う方法です。これは、レコードのバッチを1つ取り出してから、次に各レコードを1つのモデルとして個別にブロックにyieldします。2つ目の方法はfind_in_batches
メソッドを使う方法です。レコードのバッチを1つ取り出してから、次にバッチ全体をモデルの配列としてブロックにyieldします。
find_each
メソッドとfind_in_batches
メソッドは、一度にメモリに読み込めないような大量のレコードに対するバッチ処理のためのものです。数千件のレコードに対して単にループ処理を行なう程度なら通常の検索メソッドで十分です。
find_each
find_each
メソッドは、複数のレコードを一括で取り出し、続いて 各 レコードを1つのブロックにyieldします。以下の例では、find_each
でバッチから1000件のレコードを一括で取り出し、各レコードをブロックにyieldします。
Customer.find_each do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
この処理は、必要に応じてさらにレコードのまとまりをフェッチし、すべてのレコードが処理されるまで繰り返されます。
find_each
メソッドは上述のようにモデルのクラスに対して機能します。上で見たように、対象がリレーションの場合も同様です。
Customer.where(weekly_subscriber: true).find_each do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
ただしこれは順序指定がない場合に限ります。find_each
メソッドでイテレートするには内部で順序を強制する必要があるためです。
レシーバー側に順序がある場合、config.active_record.error_on_ignored_order
フラグの状態によって振る舞いが変わります。たとえばtrue
の場合はArgumentError
が発生し、false
の場合は順序が無視されて警告が発生します。デフォルトはfalse
です。このフラグを上書きしたい場合は:error_on_ignore
オプション(後述)を使います。
find_each
のオプション:batch_size
:batch_size
オプションは、(ブロックに個別に渡される前に)1回のバッチで取り出すレコード数を指定します。たとえば、1回に5000件ずつ処理したい場合は以下のように指定します。
Customer.find_each(batch_size: 5000) do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
:start
デフォルトでは、レコードは主キーの昇順に取り出されます。並び順冒頭のIDが不要な場合は、:start
オプションを使ってシーケンスの開始IDを指定できます。これは、たとえば中断したバッチ処理を再開する場合などに便利です(最後に実行された処理のIDがチェックポイントとして保存済みであることが前提です)。
たとえば主キーが2000番以降のユーザーに対してニュースレターを配信する場合は、以下のようになります。
Customer.find_each(start: 2000) do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
:finish
:start
オプションと同様に、シーケンスの末尾のIDを指定したい場合は、:finish
オプションで末尾のIDを設定できます。:start
と:finish
でレコードのサブセットを指定し、その中でバッチプロセスを走らせたい時に便利です。
たとえば主キーが2000番〜10000番のユーザーに対してニュースレターを配信したい場合は、以下のようになります。
Customer.find_each(start: 2000, finish: 10000) do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
他にも、同じ処理キューを複数のワーカーで手分けする場合が考えられます。たとえばワーカーごとに10000レコードずつ処理したい場合も、:start
と:finish
オプションにそれぞれ適切な値を設定することで実現できます。
:error_on_ignore
リレーション内に特定の順序があれば例外を発生させたい場合は、このオプションでアプリケーションの設定を上書きします。
:order
主キーの並び順(:asc
または:desc
)を指定します。デフォルト値は:asc
です。
Customer.find_each(order: :desc) do |customer| NewsMailer.weekly(customer).deliver_now end
find_in_batches
find_in_batches
メソッドは、レコードをバッチで取り出すという点でfind_each
と似ています。違うのは、find_in_batches
はバッチを個別にではなくモデルの配列としてブロックにyieldするという点です。以下の例では、与えられたブロックに対して一度に最大1000人までの顧客(customer)の配列をyieldしています。最後のブロックには残りの顧客が含まれます。
# 1回あたり1000人の顧客の配列をadd_customersに渡す Customer.find_in_batches do |customers| export.add_customers(customers) end
find_in_batches
メソッドは上述のようにモデルのクラスに対して機能します。対象がリレーションの場合も同様です。
# 1回あたり直近のアクティブな1000人の顧客の配列をadd_customersに渡す Customer.recently_active.find_in_batches do |customers| export.add_customers(customers) end
ただしこれは順序指定がない場合に限ります。find_in_batches
メソッドでイテレートするには内部で順序を強制する必要があるためです。
find_in_batches
のオプションfind_in_batches
メソッドでは、find_each
メソッドと同様のオプションを使えます。
:batch_size
find_each
と同様に、batch_size
はグループごとのレコード数を指定します。たとえば、レコードを2500件ずつ取り出すには以下のように指定できます。
Customer.find_in_batches(batch_size: 2500) do |customers| export.add_customers(customers) end
:start
start
オプションを使うと、レコードがSELECTされるときの最初のIDを指定できます。上述のように、デフォルトではレコードを主キーの昇順でフェッチします。たとえば、ID: 5000から始まる顧客レコードを2500件ずつ取り出すには、以下のようなコードが使えます。
Customer.find_in_batches(batch_size: 2500, start: 5000) do |customers| export.add_customers(customers) end
:finish
finish
オプションを使うと、レコードを取り出すときの末尾のIDを指定できます。以下は、ID: 7000までの顧客レコードをバッチで取り出す場合のコードです。
Customer.find_in_batches(finish: 7000) do |customers| export.add_customers(customers) end
:error_on_ignore
リレーション内に特定の順序があれば例外を発生させたい場合は、error_on_ignore
オプションでアプリケーションの設定を上書きします。
where
メソッドは、返されるレコードを制限するための条件を指定します。SQL文で言うWHERE
の部分に相当します。条件は、文字列、配列、ハッシュのいずれかの方法で与えることができます。
検索メソッドに条件を追加したい場合、たとえばBook.where("title = 'Introduction to Algorithms'")
のように条件を単純に指定できます。この場合、title
フィールドの値が'Introduction to Algorithms'であるすべてのクライアントが検索されます。
条件を文字列だけで構成すると、SQLインジェクションの脆弱性が発生する可能性があります。たとえば、Book.where("title LIKE '%#{params[:title]}%'")
という書き方は危険です。次で説明するように、配列を使うのが望ましい方法です。
条件で使う数値が変動する可能性がある場合、引数をどのようにすればよいでしょうか。この場合は以下のようにします。
Book.where("title = ?", params[:title])
Active Recordは最初の引数を、文字列で表された条件として受け取ります。その後に続く引数は、文字列内にある疑問符?
と置き換えられます。
複数の条件を指定したい場合は次のようにします。
Book.where("title = ? AND out_of_print = ?", params[:title], false)
上の例では、1つ目の疑問符はparams[:title]
の値で置き換えられ、2つ目の疑問符はfalse
をSQL形式に変換したもの(変換方法はアダプタによって異なる)で置き換えられます。
以下のように?
を用いるコードの書き方を強く推奨します。
Book.where("title = ?", params[:title])
以下のように文字列で式展開#{}
を使う書き方は危険であり、避ける必要があります。
Book.where("title = #{params[:title]}")
条件文字列の中に変数を直接置くと、その変数はデータベースにそのまま渡されてしまいます。これは、悪意のある人物がエスケープされていない危険な変数を渡すことが可能になるということです。このようなコードがあると、悪意のある人物がデータベースを意のままにすることができ、データベース全体が危険にさらされます。くれぐれも、条件文字列の中に引数を直接置くことはしないでください。
SQLインジェクションの詳細についてはRuby on Railsセキュリティガイドを参照してください。
疑問符(?)
をパラメータで置き換えるスタイルと同様、条件中でキーバリューのハッシュも渡せます。ここで渡されたハッシュは、条件中の対応するキーバリューの部分に置き換えられます。
Book.where("created_at >= :start_date AND created_at <= :end_date", { start_date: params[:start_date], end_date: params[:end_date] })
このように書くことで、条件で多数の変数を使うコードが読みやすくなります。
LIKE
を使う引数はSQLインジェクションを防ぐために自動的にエスケープされますが、SQL LIKE
ワイルドカード(つまり、%
と_
)はエスケープされません。引数にサニタイズされていない値が使われている場合、予期しない動作となることがあります。例えば:
Book.where("title LIKE ?", params[:title] + "%")
上の例は、ユーザーが指定した文字列で始まるタイトルに一致することを意図しています。しかし、params[:title]
に含まれる%
または_
はワイルドカードとして扱われるため、意外な結果をもたらします。状況によっては、データベースがインデックスを利用できなくなるため、クエリが大幅に遅くなる可能性があります。
これらの問題を回避するには、関連する引数のワイルドカード文字をsanitize_sql_like
でエスケープします。
Book.where("title LIKE ?", Book.sanitize_sql_like(params[:title]) + "%")
Active Recordは条件をハッシュで渡すこともできます。この書式を使うことで条件構文が読みやすくなります。条件をハッシュで渡す場合、ハッシュのキーには条件付けしたいフィールドを、ハッシュの値にはそのフィールドをどのように条件づけするかを、それぞれ指定します。
ハッシュによる条件を利用できるのは、等値、範囲、サブセットのチェックだけです。
Book.where(out_of_print: true)
これは以下のようなSQLを生成します。
SELECT * FROM books WHERE (books.out_of_print = 1)
フィールド名は文字列形式にもできます。
Book.where("out_of_print" => true)
belongs_toリレーションシップの場合、Active Recordオブジェクトが値として使われていれば、モデルを指定する時に関連付けキーを利用できます。この方法はポリモーフィックリレーションシップでも同様に利用できます。
author = Author.first Book.where(author: author) Author.joins(:books).where(books: { author: author })
ハッシュ条件は、以下のように「キーがカラムの配列である」かつ「値がタプルの配列である」タプル的な構文でも指定できます。
Book.where([:author_id, :id] => [[15, 1], [15, 2]])
この構文は、以下のようにテーブルが複合主キーを利用しているリレーションをクエリするときに便利な場合があります。
class Book < ApplicationRecord self.primary_key = [:author_id, :id] end Book.where(Book.primary_key => [[2, 1], [3, 1]])
Book.where(created_at: (Time.now.midnight - 1.day)..Time.now.midnight)
上の例では、昨日作成されたすべてのクライアントを検索します。内部ではSQLのBETWEEN
文が使われます。
SELECT * FROM books WHERE (books.created_at BETWEEN '2008-12-21 00:00:00' AND '2008-12-22 00:00:00')
条件を配列で表すでは、さらに簡潔な文例をご紹介しています。
Rubyの終端/始端を持たない範囲オブジェクト(beginless/endless range)がサポートされており、以下のように「〜より大きい」「〜より小さい」条件の構築で利用できます。
Book.where(created_at: (Time.now.midnight - 1.day)..)
上は、以下のようなSQLを生成します。
SELECT * FROM books WHERE books.created_at >= '2008-12-21 00:00:00'
SQLのIN
式でレコードを検索したい場合、条件ハッシュにそのための配列を渡せます。
Customer.where(orders_count: [1, 3, 5])
上のコードを実行すると、以下のようなSQLが生成されます。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.orders_count IN (1, 3, 5))
SQLのNOT
クエリは、where.not
で表せます。
Customer.where.not(orders_count: [1, 3, 5])
言い換えれば、このクエリはwhere
に引数を付けずに呼び出し、直後にwhere
条件にnot
を渡してチェインすることで生成されています。これは以下のようなSQLを出力します。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.orders_count NOT IN (1, 3, 5))
あるクエリのnull許容(nullable)カラムに、非nil値を指定したハッシュ条件がある場合、null許容カラムにnil
値を持つレコードは返されません。
Customer.create!(nullable_country: nil) Customer.where.not(nullable_country: "UK") # => [] # ただし Customer.create!(nullable_country: "UK") Customer.where.not(nullable_country: nil) # => [#<Customer id: 2, nullable_country: "UK">]
2つのリレーションをまたいでOR
条件を使いたい場合は、1つ目のリレーションでor
メソッドを呼び出し、そのメソッドの引数に2つ目のリレーションを渡すことで実現できます。
Customer.where(last_name: "Smith").or(Customer.where(orders_count: [1, 3, 5]))
SELECT * FROM customers WHERE (customers.last_name = 'Smith' OR customers.orders_count IN (1, 3, 5))
AND
条件は、where
条件をチェインすることで構成できます。
Customer.where(last_name: "Smith").where(orders_count: [1, 3, 5])
SELECT * FROM customers WHERE customers.last_name = 'Smith' AND customers.orders_count IN (1, 3, 5)
リレーション間の論理的な交差(共通集合)を表すAND
条件は、1個目のリレーションでand
を呼び出し、その引数で2個目のリレーションを指定することで構成できます。
Customer.where(id: [1, 2]).and(Customer.where(id: [2, 3]))
SELECT * FROM customers WHERE (customers.id IN (1, 2) AND customers.id IN (2, 3))
データベースから取り出すレコードを特定の順序で並べ替えたい場合は、order
メソッドが使えます。
たとえば、ひとかたまりのレコードを取り出し、それをテーブル内のcreated_at
の昇順で並べたい場合には以下のようにします。
Book.order(:created_at) # または Book.order("created_at")
ASC
(昇順)やDESC
(降順)も指定できます。
Book.order(created_at: :desc) # または Book.order(created_at: :asc) # または Book.order("created_at DESC") # または Book.order("created_at ASC")
複数のフィールドを指定して並べることもできます。
Book.order(title: :asc, created_at: :desc) # または Book.order(:title, created_at: :desc) # または Book.order("title ASC, created_at DESC") # または Book.order("title ASC", "created_at DESC")
order
メソッドを複数回呼び出すと、続く並び順は最初の並び順に追加されていきます。
irb> Book.order("title ASC").order("created_at DESC") # SELECT * FROM books ORDER BY title ASC, created_at DESC
以下のようにjoinしたテーブルで順序を指定することも可能です。
Book.includes(:author).order(books: { print_year: :desc }, authors: { name: :asc }) # または Book.includes(:author).order("books.print_year desc", "authors.name asc")
多くのデータベースシステムでは、select
、pluck
、ids
メソッドを使ってフィールドを選択しています。これらのデータベースシステムでは、選択しているリストにorder
句を使ったフィールドが含まれていないと、order
メソッドでActiveRecord::StatementInvalid
例外が発生します。結果から特定のフィールドを取り出す方法については、次のセクションを参照してください。
デフォルトでは、Model.find
を実行すると、結果セットからすべてのフィールドが選択されます。内部的にはSQLのselect *
が実行されています。
結果セットから特定のフィールドだけを取り出したい場合は、select
メソッドが使えます。
たとえば、out_of_print
カラムとisbn
カラムだけを取り出したい場合は以下のようにします。
Book.select(:isbn, :out_of_print) # または Book.select("isbn, out_of_print")
上の検索で実際に使われるSQL文は以下のようになります。
SELECT isbn, out_of_print FROM books
select
を使うと、選択したフィールドだけを使ってモデルオブジェクトが初期化されるため、注意が必要です。モデルオブジェクトの初期化時に指定しなかったフィールドにアクセスしようとすると、以下のメッセージが表示されます。
ActiveModel::MissingAttributeError: missing attribute: <属性名> for Book
<属性名>
は、アクセスしようとした属性です。id
メソッドは、このActiveRecord::MissingAttributeError
を発生しません。このため、関連付けを扱う場合にはご注意ください。関連付けが正常に動作するにはid
メソッドが必要です。
特定のフィールドについて、重複のない一意の値を1レコードだけ取り出したい場合は、distinct
が使えます。
Customer.select(:last_name).distinct
上のコードを実行すると、以下のようなSQLが生成されます。
SELECT DISTINCT last_name FROM customers
一意性の制約を外すこともできます。
# 一意のlast_namesを返す query = Customer.select(:last_name).distinct # 重複の有無を問わず、すべてのlast_namesを返す query.distinct(false)
Model.find
で実行されるSQLにLIMIT
を適用したい場合は、リレーションでlimit
メソッドやoffset
メソッドを用いてLIMIT
を指定できます。
limit
メソッドは、取り出すレコード数の上限を指定します。offset
は、レコードを返す前にスキップするレコード数を指定します。
Customer.limit(5)
上を実行すると顧客が最大で5人返されます。オフセットは指定されていないので、最初の5つがテーブルから取り出されます。この時実行されるSQLは以下のような感じになります。
SELECT * FROM customers LIMIT 5
offset
を追加すると以下のようになります。
Customer.limit(5).offset(30)
上のコードは、顧客の最初の30人をスキップして31人目から最大5人の顧客を返します。このときのSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers LIMIT 5 OFFSET 30
検索メソッドで実行されるSQLにGROUP BY
句を追加したい場合は、group
メソッドを検索メソッドに追加できます。
たとえば、注文(order)の作成日のコレクションを検索したい場合は、以下のようにします。
Order.select("created_at").group("created_at")
上のコードは、データベースで注文のある日付ごとにOrder
オブジェクトを1つ作成します。
上で実行されるSQLは以下のようなものになります。
SELECT created_at FROM orders GROUP BY created_at
グループ化した項目の合計を1つのクエリで得るには、group
の次にcount
を呼び出します。
irb> Order.group(:status).count => {"being_packed"=>7, "shipped"=>12}
上で実行されるSQLは以下のようなものになります。
SELECT COUNT (*) AS count_all, status AS status FROM orders GROUP BY status
SQLでは、GROUP BY
フィールドで条件を指定する場合にHAVING
句を使います。検索メソッドでhaving
メソッドを使えば、Model.find
で生成されるSQLにHAVING
句を追加できます。
以下に例を示します。
Order.select("created_at as ordered_date, sum(total) as total_price"). group("created_at").having("sum(total) > ?", 200)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT created_at as ordered_date, sum(total) as total_price FROM orders GROUP BY created_at HAVING sum(total) > 200
これはorderオブジェクトごとに注文日と合計金額を返します。具体的には、priceが$200を超えている注文が、dateごとにまとめられて返されます。
orderオブジェクトごとのtotal_price
にアクセスするには以下のように書きます。
big_orders = Order.select("created_at, sum(total) as total_price") .group("created_at") .having("sum(total) > ?", 200) big_orders[0].total_price # 最初のOrderオブジェクトの合計額が返される
unscope
unscope
で特定の条件を取り除けます。以下に例を示します。
Book.where('id > 100').limit(20).order('id desc').unscope(:order)
上で実行されるSQLは以下のようなものになります。
SELECT * FROM books WHERE id > 100 LIMIT 20 -- `unscope`する前のオリジナルのクエリ SELECT * FROM books WHERE id > 100 ORDER BY id desc LIMIT 20
以下のように特定のwhere
句でunscope
を指定することも可能です。
Book.where(id: 10, out_of_print: false).unscope(where: :id) # SELECT books.* FROM books WHERE out_of_print = 0
unscope
をリレーションに適用すると、それにマージされるすべてのリレーションにも影響します。
Book.order("id desc").merge(Book.unscope(:order)) # SELECT books.* FROM books
only
以下のようにonly
メソッドを使って条件を上書きできます。
Book.where("id > 10").limit(20).order("id desc").only(:order, :where)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books WHERE id > 10 ORDER BY id DESC -- `only`を使う前のオリジナルのクエリ SELECT * FROM books WHERE id > 10 ORDER BY id DESC LIMIT 20
reselect
reselect
メソッドで以下のように既存のselect
文を上書きできます。
Book.select(:title, :isbn).reselect(:created_at)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT books.created_at FROM books
reselect
句を使わない場合と比較してみましょう。
Book.select(:title, :isbn).select(:created_at)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT books.title, books.isbn, books.created_at FROM books
reorder
reorder
メソッドは、以下のようにデフォルトのスコープの並び順を上書きします。
class Author < ApplicationRecord has_many :books, -> { order(year_published: :desc) } end
続いて以下を実行します。
Author.find(10).books
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM authors WHERE id = 10 LIMIT 1 SELECT * FROM books WHERE author_id = 10 ORDER BY year_published DESC
reorder
を使うと、以下のようにbooksで別の並び順を指定できます。
Author.find(10).books.reorder("year_published ASC")
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM authors WHERE id = 10 LIMIT 1 SELECT * FROM books WHERE author_id = 10 ORDER BY year_published ASC
reverse_order
reverse_order
メソッドは、並び順が指定されている場合に並び順を逆にします。
Book.where("author_id > 10").order(:year_published).reverse_order
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books WHERE author_id > 10 ORDER BY year_published DESC
SQLクエリで並び順を指定する句がない状態でreverse_order
を実行すると、主キーの逆順になります。
Book.where("author_id > 10").reverse_order
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books WHERE author_id > 10 ORDER BY books.id DESC
このメソッドは引数を取りません。
rewhere
rewhere
メソッドは、以下のように既存のwhere
条件を上書きします。
Book.where(out_of_print: true).rewhere(out_of_print: false)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books WHERE out_of_print = 0
rewhere
句ではなくwhere
句にすると、2つのwhere
句のAND条件になります。
Book.where(out_of_print: true).where(out_of_print: false)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books WHERE out_of_print = 1 AND out_of_print = 0
regroup
regroup
メソッドは、既存の名前付きgroup
条件をオーバーライドします。
例:
Book.group(:author).regroup(:id)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books GROUP BY id
regroup
を使わない場合、group
句は結合されます。
Book.group(:author).group(:id)
上で実行されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM books GROUP BY author, id
none
メソッドは、チェイン(chain)可能なリレーションを返します(レコードは返しません)。このメソッドから返されたリレーションにどのような条件をチェインさせても、常に空のリレーションが生成されます。これは、メソッドまたはスコープへのチェイン可能な応答が必要で、しかも結果を一切返したくない場合に便利です。
Book.none # 空のリレーションを返し、クエリを生成しない
# highlighted_reviewsメソッドはリレーションを返すことが期待されている Book.first.highlighted_reviews.average(:rating) # => 本1冊あたりの平均レーティングを返す class Book # レビューが5件以上の場合にレビューを返す # それ以外の本はレビューなしとみなす def highlighted_reviews if reviews.count > 5 reviews else Review.none # レビュー5件未満の場合 end end end
Active Recordには、返されたどのオブジェクトに対しても変更を明示的に禁止するreadonly
メソッドがあります。読み取り専用を指定されたオブジェクトに対する変更の試みはすべて失敗し、ActiveRecord::ReadOnlyRecord
例外が発生します。
customer = Customer.readonly.first customer.visits += 1 customer.save # ActiveRecord::ReadOnlyRecordがraiseされる
上のコードではcustomer
に対して明示的にreadonly
が指定されているため、visits
の値を更新してcustomer.save
を行なうとActiveRecord::ReadOnlyRecord
例外が発生します。
ロックは、データベースのレコードを更新する際の競合状態を避け、アトミックな(=中途半端な状態のない)更新を行なうために有用です。
Active Recordには2とおりのロック機構があります。
楽観的ロックでは、複数のユーザーが同じレコードを同時編集することを許し、データの衝突が最小限であることを仮定しています。この方法では、レコードがオープンされてから変更されたことがあるかどうかをチェックします。そのような変更が行われ、かつ更新が無視された場合、ActiveRecord::StaleObjectError
例外が発生します。
楽観的ロックカラム
楽観的ロックを使うには、テーブルにlock_version
という名前のinteger型カラムが必要です。Active Recordは、レコードが更新されるたびにlock_version
カラムの値を1ずつ増やします。更新リクエストが発生したときのlock_version
の値がデータベース上のlock_version
カラムの値よりも小さい場合、更新リクエストは失敗し、以下のようにActiveRecord::StaleObjectError
エラーが発生します。
c1 = Customer.find(1) c2 = Customer.find(1) c1.first_name = "Sandra" c1.save c2.first_name = "Michael" c2.save # ActiveRecord::StaleObjectErrorが発生
開発者は、例外の発生後にこの例外をrescueして衝突を解決する必要があります。衝突の解決方法は、ロールバック、マージ、またはビジネスロジックに応じた解決方法のいずれかをお使いください。
ActiveRecord::Base.lock_optimistically = false
を設定するとこの動作をオフにできます。
ActiveRecord::Base
には、lock_version
カラム名を上書きするためのlocking_column
属性が用意されています。
class Customer < ApplicationRecord self.locking_column = :lock_customer_column end
悲観的ロックでは、データベースが提供するロック機構を利用します。リレーションの構築時にlock
を使うと、選択した行に対する排他的ロックを取得できます。lock
を用いているリレーションは、デッドロック条件を回避するために通常トランザクションの内側にラップされます。
以下に例を示します。
Book.transaction do book = Book.lock.first book.title = "Algorithms, second edition" book.save! end
バックエンドがMySQLの場合、上のセッションによって以下のSQLが生成されます。
SQL (0.2ms) BEGIN Book Load (0.3ms) SELECT * FROM books LIMIT 1 FOR UPDATE Book Update (0.4ms) UPDATE books SET updated_at = '2009-02-07 18:05:56', title = 'Algorithms, second edition' WHERE id = 1 SQL (0.8ms) COMMIT
異なる種類のロックを使いたい場合は、lock
メソッドに生SQLを渡すことも可能です。たとえば、MySQLにはLOCK IN SHARE MODE
という式があります(レコードのロック中にも他のクエリからの読み出しを許可します)。この式を指定するには、以下のように単にlockオプションの引数で渡します。
Book.transaction do book = Book.lock("LOCK IN SHARE MODE").find(1) book.increment!(:views) end
この機能を使うには、lock
メソッドで渡す生SQLがデータベースでサポートされていなければなりません。
モデルのインスタンスが既にある場合は、トランザクションを開始してその中でロックを一度に取得できます。
book = Book.first book.with_lock do # このブロックはトランザクション内で呼び出される # bookはロック済み book.increment!(:views) end
Active RecordはJOIN
句のSQLを具体的に指定する2つの検索メソッドを提供しています。1つはjoins
、もう1つはleft_outer_joins
です。joins
メソッドはINNER JOIN
やカスタムクエリに使われ、left_outer_joins
はLEFT OUTER JOIN
クエリの生成に使われます。
joins
joins
メソッドには複数の使い方があります。
joins
メソッドの引数に生のSQLを指定することでJOIN
句を指定できます。
Author.joins("INNER JOIN books ON books.author_id = authors.id AND books.out_of_print = FALSE")
これによって以下のSQLが生成されます。
SELECT authors.* FROM authors INNER JOIN books ON books.author_id = authors.id AND books.out_of_print = FALSE
Active Recordでは、joins
メソッドを利用して関連付けでJOIN
句を指定する際に、モデルで定義されている関連付け名をショートカットとして利用できます(詳しくはActive Recordの関連付けを参照)。
以下のすべてにおいて、INNER JOIN
による結合クエリが期待どおりに生成されます。
Book.joins(:reviews)
上によって以下が生成されます。
SELECT books.* FROM books INNER JOIN reviews ON reviews.book_id = books.id
上のSQLを日本語で書くと「レビュー付きのすべての本について、Bookオブジェクトを1つ返す」となります。本1冊にレビューが2件以上ついている場合は、本が重複表示される点にご注意ください。重複のない一意の本を表示したい場合は、Book.joins(:reviews).distinct
が使えます。
Book.joins(:author, :reviews)
上によって以下が生成されます。
SELECT books.* FROM books INNER JOIN authors ON authors.id = books.author_id INNER JOIN reviews ON reviews.book_id = books.id
上のSQLを日本語で書くと「著者があり、レビューが1件以上ついている本をすべて表示する」となります。これも上と同様に、レビューが複数ある本は複数回表示されます。
Book.joins(reviews: :customer)
上によって以下が生成されます。
SELECT books.* FROM books INNER JOIN reviews ON reviews.book_id = books.id INNER JOIN customers ON customers.id = reviews.customer_id
上のSQLを日本語で書くと「ある顧客によるレビューが付いている本をすべて返す」となります。
Author.joins(books: [{ reviews: { customer: :orders } }, :supplier])
上によって以下が生成されます。
SELECT authors.* FROM authors INNER JOIN books ON books.author_id = authors.id INNER JOIN reviews ON reviews.book_id = books.id INNER JOIN customers ON customers.id = reviews.customer_id INNER JOIN orders ON orders.customer_id = customers.id INNER JOIN suppliers ON suppliers.id = books.supplier_id
上のSQLを日本語で書くと「レビューが付いていて、かつ、ある顧客が注文した本のすべての著者と、それらの本の仕入先(suppliers)を返す」となります。
標準の配列および文字列条件を使って、結合テーブルに条件を指定できます。ハッシュ条件の場合は、結合テーブルで条件を指定するときに特殊な構文を使います。
time_range = (Time.now.midnight - 1.day)..Time.now.midnight Customer.joins(:orders).where("orders.created_at" => time_range).distinct
上は、created_at
をSQLのBETWEEN
式で比較することで、昨日注文を行ったすべての顧客を検索できます。
さらに読みやすい別の方法は、以下のようにハッシュ条件をネストさせることです。
time_range = (Time.now.midnight - 1.day)..Time.now.midnight Customer.joins(:orders).where(orders: { created_at: time_range }).distinct
さらに高度な条件指定や既存の名前付きスコープの再利用を行いたい場合は、merge
が利用できるでしょう。最初に、Order
モデルに新しい名前付きスコープを追加してみましょう。
class Order < ApplicationRecord belongs_to :customer scope :created_in_time_range, ->(time_range) { where(created_at: time_range) } end
これで、created_in_time_range
スコープ内でmerge
を用いてマージできるようになります。
time_range = (Time.now.midnight - 1.day)..Time.now.midnight Customer.joins(:orders).merge(Order.created_in_time_range(time_range)).distinct
上も、SQLのBETWEEN
式で比較することで、昨日注文を行ったすべての顧客を検索できます。
left_outer_joins
関連レコードがあるかどうかにかかわらずレコードのセットを取得したい場合は、left_outer_joins
メソッドを使います。
Customer.left_outer_joins(:reviews).distinct.select("customers.*, COUNT(reviews.*) AS reviews_count").group("customers.id")
上のコードは、以下のクエリを生成します。
SELECT DISTINCT customers.*, COUNT(reviews.*) AS reviews_count FROM customers LEFT OUTER JOIN reviews ON reviews.customer_id = customers.id GROUP BY customers.id
上のSQLを日本語で書くと「レビューがあるかどうかにかかわらず、全ての顧客をレビュー数とともに返す」となります。
where.associated
とwhere.missing
associated
クエリメソッドとmissing
クエリメソッドでは、関連付けの有無に基づいてレコードの集合を選択できます。
where.associated
は以下のように使います。
Customer.where.associated(:reviews)
Produces:
SELECT customers.* FROM customers INNER JOIN reviews ON reviews.customer_id = customers.id WHERE reviews.id IS NOT NULL
これは「1件以上レビューした全顧客を返せ」という意味になります。
where.missing
は以下のように使います。
Customer.where.missing(:reviews)
上のコードは、以下のクエリを生成します。
SELECT customers.* FROM customers LEFT OUTER JOIN reviews ON reviews.customer_id = customers.id WHERE reviews.id IS NULL
これは「レビューをしていない全顧客を返せ」という意味になります。
eager loading(一括読み込み)とは、Model.find
によって返されるオブジェクトに関連付けられたレコードを、クエリの利用回数をできるかぎり減らして読み込むためのメカニズムです。
以下のコードについて考えてみましょう。このコードは、本を10冊検索して著者のlast_name
を表示します。
books = Book.limit(10) books.each do |book| puts book.author.last_name end
このコードは一見何の問題もないように見えます。しかし本当の問題は、実行されたクエリの回数が無駄に多いことなのです。上のコードでは、最初に本を10冊検索するクエリを1回発行し、次にそこからlast_name
を取り出すのにクエリを10回発行しますので、合計で 11 回のクエリが発行されます。
Active Recordでは、以下のメソッドを用いることで、読み込まれるすべての関連付けを事前に指定できます。
includes
includes
を指定すると、Active Recordは指定されたすべての関連付けを最小限のクエリ回数で読み込むようになります。
上の例で言うと、Book.limit(10)
というコードを以下のように書き直すことで、last_name
が一括で読み込まれます。
books = Book.includes(:author).limit(10) books.each do |book| puts book.author.last_name end
最初の例では 11 回もクエリが実行されましたが、書き直した例ではわずか 2 回にまで減りました。
SELECT books.* FROM books LIMIT 10 SELECT authors.* FROM authors WHERE authors.id IN (1,2,3,4,5,6,7,8,9,10)
Active Recordは、1つのModel.find
呼び出しで関連付けをいくつでもeager loadingできます。これを行なうには、includes
メソッドを呼び出して「配列」「ハッシュ」または「配列やハッシュをネストしたハッシュ」を指定します。
Customer.includes(:orders, :reviews)
上のコードは、すべての顧客を表示するとともに、顧客ごとに関連付けられている注文やレビューも表示します。
Customer.includes(orders: { books: [:supplier, :author] }).find(1)
上のコードは、id=1の顧客を検索し、関連付けられたすべての注文、それぞれの本の仕入先と著者を読み込みます。
Active Recordでは、eager loadingされた関連付けに対して、joins
のように条件を指定可能ですが、このやり方よりもjoinsを使うことをオススメします。
とはいえ、eager loadingされた関連付けに対して条件を指定せざるを得ない場合は、以下のように普通にwhereを使っても大丈夫です。
Author.includes(:books).where(books: { out_of_print: true })
このコードは、以下のようにLEFT OUTER JOIN
を含むクエリを1つ生成します。joins
メソッドを使うと、代わりにINNER JOIN
を使うクエリが生成されます。
SELECT authors.id AS t0_r0, ... books.updated_at AS t1_r5 FROM authors LEFT OUTER JOIN books ON books.author_id = authors.id WHERE (books.out_of_print = 1)
where
条件がない場合は、通常のクエリが2つ生成されます。
where
がこのように動作するのは、ハッシュを渡した場合だけです。SQLフラグメント文字列を渡す場合には、強制的に結合テーブルとして扱うためにreferences
を使う必要があります。
Author.includes(:books).where("books.out_of_print = true").references(:books)
このincludes
クエリの場合、どの著者にも本がないので、すべての著者が引き続き読み込まれます。joins
(INNER JOIN)を使う場合、結合条件は必ずマッチ しなければならず 、それ以外の場合にはレコードは返されません。
関連付けがjoinの一部としてeager loadingされている場合、読み込んだモデルの中にカスタマイズされたselect句のフィールドが存在しなくなります。これは親レコード(または子レコード)の中で表示してよいかどうかが曖昧になってしまうためです。
preload
preload
を使うと、Active Recordは指定された関連付けを、1つの関連付けにつき1件のクエリで読み込むようにします。
N+1クエリ問題が発生した場合で再び説明すると、preload
メソッドを使って以下のようにBook.limit(10)
を書き換えて著者(author)をプリロードできます。
books = Book.preload(:author).limit(10) books.each do |book| puts book.author.last_name end
書き換え前は 11 回もクエリが実行されましたが、書き直した上のコードはわずか 2 回にまで減りました。
SELECT books.* FROM books LIMIT 10 SELECT authors.* FROM authors WHERE authors.id IN (1,2,3,4,5,6,7,8,9,10)
「配列」「ハッシュ」または「配列やハッシュをネストしたハッシュ」を用いるpreload
メソッドは、includes
メソッドと同様にModel.find
呼び出しで任意の個数の関連付けを読み込みます。ただしincludes
メソッドと異なり、eager loadingされる関連付けに条件を指定できません。
eager_load
eager_load
メソッドを使うと、Active Recordは、指定されたすべての関連付けをLEFT OUTER JOIN
で読み込みます。
N+1クエリが発生した場合で再び説明すると、eager_load
メソッドを使って以下のようにBook.limit(10)
を書き換えて著者(author)をeager loadingできます。
books = Book.eager_load(:author).limit(10) books.each do |book| puts book.author.last_name end
書き換え前は11回もクエリが実行されましたが、書き直した上のコードはわずか1回にまで減りました。
SELECT "books"."id" AS t0_r0, "books"."title" AS t0_r1, ... FROM "books" LEFT OUTER JOIN "authors" ON "authors"."id" = "books"."author_id" LIMIT 10
「配列」「ハッシュ」または「配列やハッシュをネストしたハッシュ」を用いるeager_load
メソッドは、includes
メソッドと同様にModel.find
呼び出しで任意の個数の関連付けを読み込みます。また、includes
メソッドと同様に、eager loadingされる関連付けに条件を指定できます。
strict_loading
eager loadingはN+1クエリを防止できますが、いくつかの関連付けを遅延読み込みしている可能性もあります。strict_loading
を有効にすることで、関連付けが遅延読み込みされないようにできます。
リレーションでstrict_loading
モードを有効にすると、レコードが任意の関連付けを遅延読み込みしようとしたときにActiveRecord::StrictLoadingViolationError
が発生します。
user = User.strict_loading.first user.address.city # ActiveRecord::StrictLoadingViolationErrorが発生 user.comments.to_a # ActiveRecord::StrictLoadingViolationErrorが発生
すべてのリレーションでstrict_loading
を有効にするには、config.active_record.strict_loading_by_default
フラグをtrue
に変更します。
ロガーに違反を送信するには、config.active_record.action_on_strict_loading_violation
を:log
に変更します。
strict_loading!
以下のように、レコード自身でstrict_loading!
を呼び出すことでstrict loadingを有効にすることも可能です。
user = User.first user.strict_loading! user.address.city # ActiveRecord::StrictLoadingViolationErrorが発生 user.comments.to_a # ActiveRecord::StrictLoadingViolationErrorが発生
strict_loading!
メソッドには:mode
引数も渡せます。
:n_plus_one_only
を指定すると、N+1クエリを引き起こす関連付けが遅延読み込みされた場合にのみエラーをraiseするようになります。
user.strict_loading!(mode: :n_plus_one_only) user.address.city # => "Tatooine" user.comments.to_a # => [#<Comment:0x00...] user.comments.first.likes.to_a # ActiveRecord::StrictLoadingViolationErrorが発生
strict_loading
オプションを指定する以下のようにstrict_loading
オプションを指定することで、単一の関連付けに対してstrict loadingを有効にすることも可能です。
class Author < ApplicationRecord has_many :books, strict_loading: true end
よく使うクエリをスコープに設定すると、関連オブジェクトやモデルへのメソッド呼び出しとして参照できるようになります。スコープでは、where
、joins
、includes
など、これまでに登場したメソッドをすべて使えます。どのスコープメソッドも、常にActiveRecord::Relation
オブジェクトを返します。スコープの本体では、別のスコープなどのメソッドをスコープ上で呼び出せるようにするため、ActiveRecord::Relation
かnil
のいずれかを返すようにすべきです。
シンプルなスコープを設定するには、以下のようにクラスの内部にscope
メソッドを書き、スコープが呼び出されたときに実行したいクエリをそこで渡します。
class Article < ApplicationRecord scope :published, -> { where(published: true) } end
class Book < ApplicationRecord scope :out_of_print, -> { where(out_of_print: true) } end
作成したout_of_print
スコープは、以下のようにクラスメソッドとして呼び出せます。
irb> Book.out_of_print => #<ActiveRecord::Relation> # all out of print books
あるいは、以下のようにBook
オブジェクトを用いる関連付けでも呼び出せます。
irb> author = Author.first irb> author.books.out_of_print => #<ActiveRecord::Relation> # all out of print books by `author`
スコープは、以下のようにスコープ内でチェインすることも可能です。
class Book < ApplicationRecord scope :out_of_print, -> { where(out_of_print: true) } scope :out_of_print_and_expensive, -> { out_of_print.where("price > 500") } end
スコープには以下のように引数を渡せます。
class Book < ApplicationRecord scope :costs_more_than, ->(amount) { where("price > ?", amount) } end
引数付きスコープの呼び出しは、クラスメソッドの呼び出しと同様です。
irb> Book.costs_more_than(100.10)
ただし、スコープに引数を渡す機能は、クラスメソッドによって提供される機能を単に複製したものです。
class Book < ApplicationRecord def self.costs_more_than(amount) where("price > ?", amount) end end
スコープとして定義したメソッドは、関連付けオブジェクトからもアクセス可能です。
irb> author.books.costs_more_than(100.10)
スコープで条件文を使うことも可能です。
class Order < ApplicationRecord scope :created_before, ->(time) { where(created_at: ...time) if time.present? } end
他の例と同様、これもクラスメソッドのように振る舞います。
class Order < ApplicationRecord def self.created_before(time) where(created_at: ...time) if time.present? end end
ただし、1つ重要な注意点があります。条件文を評価した結果がfalse
になった場合であっても、スコープは常にActiveRecord::Relation
オブジェクトを返します。クラスメソッドの場合はnil
を返すので、この点において振る舞いが異なります。したがって、条件文を使うクラスメソッドをチェインし、かつ、条件文のいずれかがfalse
を返す場合、NoMethodError
を発生する可能性があります。
あるスコープをモデルのすべてのクエリに適用したい場合、モデル自身の内部でdefault_scope
メソッドを使えます。
class Book < ApplicationRecord default_scope { where(out_of_print: false) } end
このモデルに対してクエリが実行されたときのSQLクエリは以下のような感じになります。
SELECT * FROM books WHERE (out_of_print = false)
デフォルトスコープの条件が複雑になる場合は、以下のようにスコープをクラスメソッドとして定義してもよいでしょう。
class Book < ApplicationRecord def self.default_scope # ActiveRecord::Relationを返すべき end end
スコープの引数がHash
で与えられると、レコードを作成するときにdefault_scope
も適用されます。ただし、レコードを更新する場合は適用されません。例:
class Book < ApplicationRecord default_scope { where(out_of_print: false) } end
irb> Book.new => #<Book id: nil, out_of_print: false> irb> Book.unscoped.new => #<Book id: nil, out_of_print: nil>
引数にArray
が与えられた場合は、default_scope
クエリの引数はHash
のデフォルト値に変換されない点に注意が必要です。例:
class Book < ApplicationRecord default_scope { where("out_of_print = ?", false) } end
irb> Book.new => #<Book id: nil, out_of_print: nil>
where
句と同様、スコープもAND
条件でマージできます。
class Book < ApplicationRecord scope :in_print, -> { where(out_of_print: false) } scope :out_of_print, -> { where(out_of_print: true) } scope :recent, -> { where(year_published: 50.years.ago.year..) } scope :old, -> { where(year_published: ...50.years.ago.year) } end
irb> Book.out_of_print.old SELECT books.* FROM books WHERE books.out_of_print = 'true' AND books.year_published < 1969
scope
とwhere
条件を混用してマッチさせることが可能です。このとき生成される最終的なSQLでは、以下のようにすべての条件がAND
で結合されます。
irb> Book.in_print.where(price: ...100) SELECT books.* FROM books WHERE books.out_of_print = 'false' AND books.price < 100
末尾のwhere
句をどうしてもスコープより優先したい場合は、merge
が使えます。
irb> Book.in_print.merge(Book.out_of_print) SELECT books.* FROM books WHERE books.out_of_print = true
ただし、1つ重要な注意点があります。default_scope
で定義した条件は、以下のようにscope
やwhere
で定義した条件よりも前に配置されます。
class Book < ApplicationRecord default_scope { where(year_published: 50.years.ago.year..) } scope :in_print, -> { where(out_of_print: false) } scope :out_of_print, -> { where(out_of_print: true) } end
irb> Book.all SELECT books.* FROM books WHERE (year_published >= 1969) irb> Book.in_print SELECT books.* FROM books WHERE (year_published >= 1969) AND books.out_of_print = false irb> Book.where('price > 50') SELECT books.* FROM books WHERE (year_published >= 1969) AND (price > 50)
上の例でわかるように、default_scope
の条件は、scope
とwhere
の条件よりも前に配置されています。
何らかの理由でスコープをすべて解除したい場合はunscoped
メソッドが使えます。このメソッドは、モデルで指定されているdefault_scope
を適用したくないクエリがある場合に特に便利です。
Book.unscoped.load
このメソッドはスコープをすべて解除し、テーブルに対して通常の(スコープなしの)クエリを実行するようにします。
irb> Book.unscoped.all SELECT books.* FROM books irb> Book.where(out_of_print: true).unscoped.all SELECT books.* FROM books
unscoped
にはブロックも渡せます。
irb> Book.unscoped { Book.out_of_print } SELECT books.* FROM books WHERE books.out_of_print = true
Active Recordは、テーブルに定義されるすべてのフィールド(属性とも呼ばれます)に対して自動的に検索メソッド(finderメソッド)を提供します。たとえば、Customer
モデルにfirst_name
というフィールドがあると、find_by_first_name
というメソッドがActive Recordによって自動的に作成されます。Customer
モデルにlocked
というフィールドがあれば、find_by_locked
というメソッドを利用できるようになります。
この動的検索メソッドの末尾にCustomer.find_by_first_name!("Ryan")
のように感嘆符(!
)を追加すると、該当するレコードがない場合にActiveRecord::RecordNotFound
エラーが発生するようになります。
first_name
とorders_count
を両方検索したい場合は、2つのフィールド名を_and_
でつなぐだけでメソッドを利用できるようになります。たとえば、Customer.find_by_first_name_and_orders_count("Ryan", 5)
といった書き方が可能です。
enum
enumを使うと、属性で使う値を配列で定義して名前で参照できるようになります。enumがデータベースに実際に保存されるときは、値に対応する整数値が保存されます。
enumを宣言すると、enumのすべての値について以下が作成されます。
たとえば以下のenum
宣言があるとします。
class Order < ApplicationRecord enum :status, [:shipped, :being_packaged, :complete, :cancelled] end
このときstatus
enumのスコープが自動的に作成され、以下のようにstatus
の特定の値を持つ(または持たない)すべてのオブジェクトを検索できるようになります。
irb> Order.shipped => #<ActiveRecord::Relation> # all orders with status == :shipped irb> Order.not_shipped => #<ActiveRecord::Relation> # all orders with status != :shipped
以下の?
付きインスタンスメソッドは自動で作成されます。以下のようにモデルがstatus
enumの値を持っているかどうかをtrue
/false
で返します。
irb> order = Order.shipped.first irb> order.shipped? => true irb> order.complete? => false
以下の!
付きインスタンスメソッドは自動で作成されます。最初にstatus
の値を更新し、次にstatus
がその値に設定されたかどうかをtrue
/false
で返します。
irb> order = Order.first irb> order.shipped! UPDATE "orders" SET "status" = ?, "updated_at" = ? WHERE "orders"."id" = ? [["status", 0], ["updated_at", "2019-01-24 07:13:08.524320"], ["id", 1]] => true
enumの完全なドキュメントについてはActiveRecord::Enum
を参照してください。
Active Recordパターンにはメソッドチェインが実装されています。これにより、複数のActive Recordメソッドをシンプルな方法で次々に適用できるようになります。
文中でメソッドチェインを利用できるのは、その前のメソッドがActiveRecord::Relation
(all
、where
、joins
など)を1つ返す場合です。単一のオブジェクトを返すメソッド(単一のオブジェクトを取り出すを参照)は文の末尾に置かなければなりません。
いくつか例をご紹介します。本ガイドでは一部の例のみをご紹介し、すべての例を網羅することはしません。Active Recordメソッドが呼び出されると、クエリはその時点ではすぐには生成されず、データベースへの送信もされません。クエリは、データが実際に必要になった時点で初めて生成され送信されます。したがって、以下のそれぞれの例で生成されるクエリはそれぞれ1つのみです。
Customer .select("customers.id, customers.last_name, reviews.body") .joins(:reviews) .where("reviews.created_at > ?", 1.week.ago)
上のコードから以下のようなSQLが生成されます。
SELECT customers.id, customers.last_name, reviews.body FROM customers INNER JOIN reviews ON reviews.customer_id = customers.id WHERE (reviews.created_at > '2019-01-08')
Book .select("books.id, books.title, authors.first_name") .joins(:author) .find_by(title: "Abstraction and Specification in Program Development")
上のコードから以下のようなSQLが生成されます。
SELECT books.id, books.title, authors.first_name FROM books INNER JOIN authors ON authors.id = books.author_id WHERE books.title = $1 [["title", "Abstraction and Specification in Program Development"]] LIMIT 1
1つのクエリが複数のレコードとマッチする場合、find_by
は「最初」の結果だけを返し、他は返しません(上のLIMIT 1
文を参照)。
レコードを検索し、レコードがなければ作成するという連続処理はよく行われます。find_or_create_by
およびfind_or_create_by!
メソッドを使えば、これらの処理を一度に行なえます。
find_or_create_by
find_or_create_by
メソッドは、指定された属性を持つレコードが存在するかどうかをチェックします。レコードがない場合はcreate
が呼び出されます。以下の例を見てみましょう。
'Andy'という名前の顧客を探し、いなければ作成したいとします。これを行なうには以下を実行します。
irb> Customer.find_or_create_by(first_name: 'Andy') => #<Customer id: 5, first_name: "Andy", last_name: nil, title: nil, visits: 0, orders_count: nil, lock_version: 0, created_at: "2019-01-17 07:06:45", updated_at: "2019-01-17 07:06:45">
このメソッドによって生成されるSQLは以下のようになります。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.first_name = 'Andy') LIMIT 1 BEGIN INSERT INTO customers (created_at, first_name, locked, orders_count, updated_at) VALUES ('2011-08-30 05:22:57', 'Andy', 1, NULL, '2011-08-30 05:22:57') COMMIT
find_or_create_by
は、既にあるレコードか新しいレコードのいずれかを返します。上の例の場合、Andyという名前の顧客がなかったのでレコードを作成して返しました。
create
などと同様、バリデーションがパスするかどうかによって、新しいレコードがデータベースに保存されていない可能性があります。
今度は、新しいレコードを作成するときにlocked
属性をfalse
に設定したいが、それをクエリに含めたくないとします。そこで、"Andy"という名前の顧客を検索するか、その名前の顧客がいない場合は"Andy"というクライアントを作成してロックを外すことにします。
これは2とおりの方法で実装できます。1つ目はcreate_with
を使う方法です。
Customer.create_with(locked: false).find_or_create_by(first_name: "Andy")
2つ目はブロックを使う方法です。
Customer.find_or_create_by(first_name: "Andy") do |c| c.locked = false end
このブロックは、顧客が作成されるときにだけ実行されます。このコードを再度実行すると、このブロックは実行されません。
find_or_create_by!
find_or_create_by!
を使うと、新しいレコードが無効な場合に例外を発生するようになります。バリデーション(検証)については本ガイドでは解説していませんが、たとえば以下のバリデーションをCustomer
モデルに追加したとします。
validates :orders_count, presence: true
orders_count
を指定せずに新しいCustomer
モデルを作成しようとすると、レコードは無効になって以下のように例外が発生します。
irb> Customer.find_or_create_by!(first_name: 'Andy') ActiveRecord::RecordInvalid: Validation failed: Orders count can't be blank
find_or_initialize_by
find_or_initialize_by
メソッドはfind_or_create_by
と同様に動作しますが、create
の代わりにnew
を呼ぶ点が異なります。つまり、モデルの新しいインスタンスは作成されますが、その時点ではデータベースに保存されていません。find_or_create_by
の例を少し変えて説明を続けます。今度は'Nina'という名前の顧客が必要だとします。
irb> nina = Customer.find_or_initialize_by(first_name: 'Nina') => #<Customer id: nil, first_name: "Nina", orders_count: 0, locked: true, created_at: "2011-08-30 06:09:27", updated_at: "2011-08-30 06:09:27"> irb> nina.persisted? => false irb> nina.new_record? => true
オブジェクトはまだデータベースに保存されていないため、生成されるSQLは以下のようなものになります。
SELECT * FROM customers WHERE (customers.first_name = 'Nina') LIMIT 1
このオブジェクトをデータベースに保存したい場合は、単にsave
を呼び出します。
irb> nina.save => true
独自のSQLでレコードを検索したい場合は、find_by_sql
メソッドが使えます。このfind_by_sql
メソッドは、オブジェクトの配列を1つ返します。クエリがレコードを1つしか返さなかった場合にも配列が返されますのでご注意ください。たとえば、以下のクエリを実行したとします。
irb> Customer.find_by_sql("SELECT * FROM customers INNER JOIN orders ON customers.id = orders.customer_id ORDER BY customers.created_at desc") => [#<Customer id: 1, first_name: "Lucas" ...>, #<Customer id: 2, first_name: "Jan" ...>, ...]
find_by_sql
は、カスタマイズしたデータベース呼び出しを簡単な方法で提供し、インスタンス化されたオブジェクトを返します。
select_all
find_by_sql
はlease_connection.select_all
と深い関係があります。select_all
はfind_by_sql
と同様、カスタムSQLを用いてデータベースからオブジェクトを取り出しますが、取り出したオブジェクトをインスタンス化しない点が異なります。このメソッドはActiveRecord::Result
クラスのインスタンスを1つ返します。このオブジェクトでto_a
を呼ぶと、各レコードに対応するハッシュを含む配列を1つ返します。
irb> Customer.lease_connection.select_all("SELECT first_name, created_at FROM customers WHERE id = '1'").to_a => [{"first_name"=>"Rafael", "created_at"=>"2012-11-10 23:23:45.281189"}, {"first_name"=>"Eileen", "created_at"=>"2013-12-09 11:22:35.221282"}]
pluck
pluck
は、指定したカラム名の値を現在のリレーションから取得するときに利用できます。引数としてカラム名のリストを渡すと、指定したカラムの値の配列を、対応するデータ型で返します。
irb> Book.where(out_of_print: true).pluck(:id) SELECT id FROM books WHERE out_of_print = true => [1, 2, 3] irb> Order.distinct.pluck(:status) SELECT DISTINCT status FROM orders => ["shipped", "being_packed", "cancelled"] irb> Customer.pluck(:id, :first_name) SELECT customers.id, customers.first_name FROM customers => [[1, "David"], [2, "Fran"], [3, "Jose"]]
pluck
を使えば、以下のようなコードをシンプルなものに置き換えられます。
Customer.select(:id).map { |c| c.id } # または Customer.select(:id).map(&:id) # または Customer.select(:id, :first_name).map { |c| [c.id, c.first_name] }
上は以下に置き換えられます。
Customer.pluck(:id) # または Customer.pluck(:id, :first_name)
select
と異なり、pluck
はデータベースから受け取った結果を直接Rubyの配列に変換してくれます。そのためのActiveRecord
オブジェクトを事前に構成しておく必要はありません。従って、このメソッドは大規模なクエリや利用頻度の高いクエリで使うとパフォーマンスが向上します。ただし、オーバーライドを行なうモデルメソッドは使えません。以下に例を示します。
class Customer < ApplicationRecord def name "私は#{first_name}" end end
irb> Customer.select(:first_name).map &:name => ["私はDavid", "私はJeremy", "私はJose"] irb> Customer.pluck(:first_name) => ["David", "Jeremy", "Jose"]
単一テーブルのフィールド読み出しに加えて、複数のテーブルでも同じことができます。
irb> Order.joins(:customer, :books).pluck("orders.created_at, customers.email, books.title")
さらにpluck
は、select
などのRelation
スコープと異なり、クエリを直接トリガーするので、その後ろに他のスコープをチェインできません。ただし、構成済みのスコープをpluck
の前に置くことは可能です。
irb> Customer.pluck(:first_name).limit(1) NoMethodError: undefined method `limit' for #<Array:0x007ff34d3ad6d8> irb> Customer.limit(1).pluck(:first_name) => ["David"]
知っておくと良い注意点は、リレーションオブジェクトにincludesがあると、eager loadingが不必要なクエリにおいてでも、pluck
がeager loadingを引き起こすことです。以下に例を示します。
irb> assoc = Customer.includes(:reviews) irb> assoc.pluck(:id) SELECT "customers"."id" FROM "customers" LEFT OUTER JOIN "reviews" ON "reviews"."id" = "customers"."review_id"
これを回避する方法の1つは、以下のようにincludesをunscope
することです。
irb> assoc.unscope(:includes).pluck(:id)
pick
pick
は、指定したカラム名の値を現在のリレーションから取得するときに利用できます。引数としてカラム名のリストを渡すと、指定したカラムの値の最初の行を、対応するデータ型で返します。
pick
は、relation.limit(1).pluck(*column_names).first
のショートハンドです。主に、既に1行に制限されたリレーションがある場合に有用です。
pick
を使うと、以下のようなコードをシンプルなものに置き換えられます。
Customer.where(id: 1).pluck(:id).first
上のコードは以下のように置き換えられます。
Customer.where(id: 1).pick(:id)
ids
ids
は、テーブルの主キーを使っているリレーションのIDをすべて取り出すのに使えます。
irb> Customer.ids SELECT id FROM customers
class Customer < ApplicationRecord self.primary_key = "customer_id" end
irb> Customer.ids SELECT customer_id FROM customers
オブジェクトが存在するかどうかをチェックするにはexists?
メソッドを使います。このメソッドは、find
と同様のクエリを使ってデータベースにクエリを送信しますが、オブジェクトのコレクションではなくtrue
またはfalse
を返します。
Customer.exists?(1)
exists?
の引数には複数の値を渡せます。ただし、それらの値のうち1つでも存在していれば、他の値が存在していなくてもtrue
を返します。
Customer.exists?(id: [1, 2, 3]) # または Customer.exists?(first_name: ["Jane", "Sergei"])
exists?
メソッドは、引数なしでモデルやリレーションに使うことも可能です。
Customer.where(first_name: "Ryan").exists?
上の例では、first_name
が'Ryan'であるクライアントが1人でもいればtrue
を返し、それ以外の場合はfalse
を返します。
Customer.exists?
上の例では、Customer
テーブルが空ならfalse
を返し、それ以外の場合はtrue
を返します。
モデルやリレーションでの存在チェックにはany?
やmany?
も使えます。many?
はSQLのCOUNT
で存在をチェックします。
# モデル経由 Order.any? # SELECT 1 FROM orders LIMIT 1 Order.many? # SELECT COUNT(*) FROM (SELECT 1 FROM orders LIMIT 2) # 名前付きスコープ経由 Order.shipped.any? # SELECT 1 FROM orders WHERE orders.status = 0 LIMIT 1 Order.shipped.many? # SELECT COUNT(*) FROM (SELECT 1 FROM orders WHERE orders.status = 0 LIMIT 2) # リレーション経由 Book.where(out_of_print: true).any? Book.where(out_of_print: true).many? # 関連付け経由 Customer.first.orders.any? Customer.first.orders.many?
このセクションでは冒頭でcount
メソッドを例に説明していますが、ここで説明されているオプションは以下のすべてのサブセクションにも該当します。
あらゆる計算メソッドは、モデルに対して直接実行できます。
irb> Customer.count SELECT COUNT(*) FROM customers
リレーションに対しても直接実行できます。
irb> Customer.where(first_name: 'Ryan').count SELECT COUNT(*) FROM customers WHERE (first_name = 'Ryan')
この他にも、リレーションに対してさまざまな検索メソッドを利用して複雑な計算を行なえます。
irb> Customer.includes("orders").where(first_name: 'Ryan', orders: { status: 'shipped' }).count
上のコードは以下を実行します。
SELECT COUNT(DISTINCT customers.id) FROM customers LEFT OUTER JOIN orders ON orders.customer_id = customers.id WHERE (customers.first_name = 'Ryan' AND orders.status = 0)
count
モデルのテーブルに含まれるレコードの個数を数えるにはCustomer.count
が使えます。返されるのはレコードの個数です。肩書きを指定して顧客の数を数えるときはCustomer.count(:title)
と書けます。
オプションについては、1つ上の計算セクションを参照してください。
average
テーブルに含まれる特定の数値の平均を得るには、そのテーブルを持つクラスでaverage
メソッドを呼び出します。このメソッド呼び出しは以下のようになります。
Order.average("subtotal")
返される値は、そのフィールドの平均値です。通常3.14159265のような浮動小数点になります。
オプションについては、1つ上の計算セクションを参照してください。
minimum
テーブルに含まれるフィールドの最小値を得るには、そのテーブルを持つクラスでminimum
メソッドを呼び出します。このメソッド呼び出しは以下のようになります。
Order.minimum("subtotal")
オプションについては、1つ上の計算セクションを参照してください。
maximum
テーブルに含まれるフィールドの最大値を得るには、そのテーブルを持つクラスに対してmaximum
メソッドを呼び出します。このメソッド呼び出しは以下のようになります。
Order.maximum("subtotal")
オプションについては、1つ上の計算セクションを参照してください。
sum
テーブルに含まれるフィールドのすべてのレコードにおける合計を得るには、そのテーブルを持つクラスに対してsum
メソッドを呼び出します。このメソッド呼び出しは以下のようになります。
Order.sum("subtotal")
オプションについては、1つ上の計算セクションを参照してください。
リレーションではexplain
を実行できます。EXPLAINの出力はデータベースによって異なります。
Customer.where(id: 1).joins(:orders).explain
MySQLとMariaDBでは、以下のような結果が生成されます。
EXPLAIN SELECT `customers`.* FROM `customers` INNER JOIN `orders` ON `orders`.`customer_id` = `customers`.`id` WHERE `customers`.`id` = 1 +----+-------------+------------+-------+---------------+ | id | select_type | table | type | possible_keys | +----+-------------+------------+-------+---------------+ | 1 | SIMPLE | customers | const | PRIMARY | | 1 | SIMPLE | orders | ALL | NULL | +----+-------------+------------+-------+---------------+ +---------+---------+-------+------+-------------+ | key | key_len | ref | rows | Extra | +---------+---------+-------+------+-------------+ | PRIMARY | 4 | const | 1 | | | NULL | NULL | NULL | 1 | Using where | +---------+---------+-------+------+-------------+ 2 rows in set (0.00 sec)
Active Recordは、対応するデータベースシェルの出力をエミュレーションして整形します。同じクエリをPostgreSQLアダプタで実行すると、以下のような結果が得られます。
EXPLAIN SELECT "customers".* FROM "customers" INNER JOIN "orders" ON "orders"."customer_id" = "customers"."id" WHERE "customers"."id" = $1 [["id", 1]] QUERY PLAN ------------------------------------------------------------------------------ Nested Loop (cost=4.33..20.85 rows=4 width=164) -> Index Scan using customers_pkey on customers (cost=0.15..8.17 rows=1 width=164) Index Cond: (id = '1'::bigint) -> Bitmap Heap Scan on orders (cost=4.18..12.64 rows=4 width=8) Recheck Cond: (customer_id = '1'::bigint) -> Bitmap Index Scan on index_orders_on_customer_id (cost=0.00..4.18 rows=4 width=0) Index Cond: (customer_id = '1'::bigint) (7 rows)
eager loadingを使うと、内部的には複数のクエリがトリガーされることがあり、このとき一部のクエリが先行するクエリの結果を必要とすることがあります。このためexplainは、このクエリを実際に実行した後で、クエリプランを要求します。以下に例を示します。
Customer.where(id: 1).includes(:orders).explain
MySQLとMariaDBでは、以下の結果を生成します。
EXPLAIN SELECT `customers`.* FROM `customers` WHERE `customers`.`id` = 1 +----+-------------+-----------+-------+---------------+ | id | select_type | table | type | possible_keys | +----+-------------+-----------+-------+---------------+ | 1 | SIMPLE | customers | const | PRIMARY | +----+-------------+-----------+-------+---------------+ +---------+---------+-------+------+-------+ | key | key_len | ref | rows | Extra | +---------+---------+-------+------+-------+ | PRIMARY | 4 | const | 1 | | +---------+---------+-------+------+-------+ 1 row in set (0.00 sec) EXPLAIN for: SELECT `orders`.* FROM `orders` WHERE `orders`.`customer_id` IN (1) +----+-------------+--------+------+---------------+ | id | select_type | table | type | possible_keys | +----+-------------+--------+------+---------------+ | 1 | SIMPLE | orders | ALL | NULL | +----+-------------+--------+------+---------------+ +------+---------+------+------+-------------+ | key | key_len | ref | rows | Extra | +------+---------+------+------+-------------+ | NULL | NULL | NULL | 1 | Using where | +------+---------+------+------+-------------+ 1 row in set (0.00 sec)
PostgreSQLの場合は以下のような結果を生成します。
Customer Load (0.3ms) SELECT "customers".* FROM "customers" WHERE "customers"."id" = $1 [["id", 1]] Order Load (0.3ms) SELECT "orders".* FROM "orders" WHERE "orders"."customer_id" = $1 [["customer_id", 1]] => EXPLAIN SELECT "customers".* FROM "customers" WHERE "customers"."id" = $1 [["id", 1]] QUERY PLAN ---------------------------------------------------------------------------------- Index Scan using customers_pkey on customers (cost=0.15..8.17 rows=1 width=164) Index Cond: (id = '1'::bigint) (2 rows)
データベースとそれをサポートするアダプタ(現在はPostgreSQL、MySQL、MariaDB)については、より深い分析を行うためのオプションを渡すことが可能です。
PostgreSQLの場合は以下のようになります。
Customer.where(id: 1).joins(:orders).explain(:analyze, :verbose)
上のコードは以下を生成します。
EXPLAIN (ANALYZE, VERBOSE) SELECT "shop_accounts".* FROM "shop_accounts" INNER JOIN "customers" ON "customers"."id" = "shop_accounts"."customer_id" WHERE "shop_accounts"."id" = $1 [["id", 1]] QUERY PLAN ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ Nested Loop (cost=0.30..16.37 rows=1 width=24) (actual time=0.003..0.004 rows=0 loops=1) Output: shop_accounts.id, shop_accounts.customer_id, shop_accounts.customer_carrier_id Inner Unique: true -> Index Scan using shop_accounts_pkey on public.shop_accounts (cost=0.15..8.17 rows=1 width=24) (actual time=0.003..0.003 rows=0 loops=1) Output: shop_accounts.id, shop_accounts.customer_id, shop_accounts.customer_carrier_id Index Cond: (shop_accounts.id = '1'::bigint) -> Index Only Scan using customers_pkey on public.customers (cost=0.15..8.17 rows=1 width=8) (never executed) Output: customers.id Index Cond: (customers.id = shop_accounts.customer_id) Heap Fetches: 0 Planning Time: 0.063 ms Execution Time: 0.011 ms (12 rows)
MySQLまたはMariaDBの場合は、以下のようになります。
Customer.where(id: 1).joins(:orders).explain(:analyze)
上のコードは以下を生成します。
ANALYZE SELECT `shop_accounts`.* FROM `shop_accounts` INNER JOIN `customers` ON `customers`.`id` = `shop_accounts`.`customer_id` WHERE `shop_accounts`.`id` = 1 +----+-------------+-------+------+---------------+------+---------+------+------+--------+----------+------------+--------------------------------+ | id | select_type | table | type | possible_keys | key | key_len | ref | rows | r_rows | filtered | r_filtered | Extra | +----+-------------+-------+------+---------------+------+---------+------+------+--------+----------+------------+--------------------------------+ | 1 | SIMPLE | NULL | NULL | NULL | NULL | NULL | NULL | NULL | NULL | NULL | NULL | no matching row in const table | +----+-------------+-------+------+---------------+------+---------+------+------+--------+----------+------------+--------------------------------+ 1 row in set (0.00 sec)
EXPLAINやANALYZEのオプションは、MySQLやMariaDBのバージョンによって異なります。
EXPLAINの出力を解釈することは、本ガイドの範疇を超えます。 以下の情報を参考にしてください。
SQLite3: EXPLAIN QUERY PLAN
MySQL: EXPLAIN出力フォーマット (v8.0日本語)
MariaDB: EXPLAIN
PostgreSQL: EXPLAINの利用
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